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胃がんのお話

胃がんとは?

胃がんとは胃の粘膜にできる悪性腫瘍です。
以前は日本人のがんの死亡数の1位でしたが、現在は肺・大腸がんに次いで多く、年間約5万人の方が亡くなっています。

胃がんの原因

胃がんの原因としてピロリ菌の持続感染、喫煙、塩分の取り過ぎなどがリスクとなります。
中でもピロリ菌感染が一番のリスクと考えられています。
日本人の中高年の方はピロリ菌の感染率が高いですが、ピロリ菌感染した全ての人が胃がんになる訳ではなく、年に約1%前後の発生率と考えられます。

胃がんの症状

初期の胃がんではほとんど症状はありません。
胃がんが進行すると胃痛、胃の違和感、胃もたれ、食欲低下などの症状が出てきます。ただしこういった症状は胃潰瘍や慢性胃炎などの他の胃の病気でも見られますので、胃がんに特有の症状というものはありません。
しかし胃がんの場合は症状が消えることはなく徐々にひどくなっていきます。

胃がんの診断

初期の胃がんは症状がありませんので、健診や人間ドックなどの胃カメラ検査で偶然見つかることが多いです。
胃がんを早期に見つけるためには、まず自分が胃がんになるリスクがあるかどうかを知ることが大切です。
それには自分がピロリ菌に感染しているかどうかを調べてください。

名古屋市在住の20〜39歳の方は無料でピロリ菌検査を受けることができます。
簡単な血液検査で数日で結果がわかります。40〜59歳の方は500円で胃がんリスク検査を受けることができます(胃がんリスク検査参照)。
これによりピロリ菌に感染しているかどうかがわかります。
ピロリ菌に感染するのは抵抗力の弱い子供の頃で、大人になってから感染することはほぼありませんので一度ピロリ菌に感染していないとわかれば、それ以降ピロリ菌検査を受ける必要はありません。

ピロリ菌陽性の方はまず胃内視鏡検査(胃カメラ)を受けて下さい。
胃炎が認められればピロリ菌除菌をします。
3種類の薬を1週間服用する事で約9割の方で除菌できます。なるべく早く除菌することでピロリ菌感染による胃のダメージを減らし、胃がんになるリスクを減らすことができます。

ピロリ菌を除菌すれば胃がんにならないという訳ではありません。
除菌後も年1回の胃カメラ検査を受けて下さい。万一胃がんが発生しても初期の段階で見つける事ができます。
健診でバリウム検査を受けられる方もいると思いますが、バリウムではごく初期のがんは見つからない事もあるので、胃カメラ検査をお勧めします。

胃がんの治療

胃がんは進行の程度によりステージ I〜Ⅳまで分けられます。
大まかにステージ I〜Ⅲは手術、ステージⅣは薬物療法となります。ステージ I の場合多くは内視鏡治療が可能です。
内視鏡を使って癌の部位を周りの粘膜と共に切除します。お腹を切らずに済むので、術後の合併症も少なく1週間程度の入院で済みます。
手術も以前のようにお腹を大きく開けて胃を切除するのではなく、腹腔鏡手術と言ってお腹に数箇所穴を開けて器具を挿入して手術を行う方法が主流になってきています。
腹腔鏡手術は手術による傷が小さく、術後の痛みも少なく回復が早い利点があります。

手術のできないステージⅣの患者さんは薬物療法が主体となります。
以前は抗がん剤はあまり効果が期待できませんでしたが、最近は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新しい薬物も登場し、個々の患者さんの状況に応じたオーダーメイド治療が行われるようになり、従来よりも生存延長が期待できるようになっています。

ステージ I で治療すれば90%以上の5年生存率が期待できます。
自覚症状の無いうちに胃がんを見つけるには胃カメラ検査を受けて下さい。名古屋市在住の50歳以上の方はワンコイン(500円)で胃カメラ検診を受ける事ができます。胃がんで亡くなる5万人のうちの一人にならないためにも、まだ検査を受けたことがない方は是非一度検査を受けることをお勧めします。

大腸がんのお話

大腸がんとは?

大腸がんは大腸に発生するがんで、腺腫という良性のポリープからがん化するものと、正常の大腸粘膜から発生するものとあります。 日本人ではS状結腸と直腸にできやすいと言われています。
近年患者数は増加傾向にあり、2022年のがん死亡者数では男性は肺がんに次いで2位、女性は1位となっています。

大腸がんの原因

大腸がんの発生要因として欧米型の食生活(高脂肪、低繊維質)や喫煙、飲酒、肥満等がリスクとされています。
運動や食物繊維の摂取が予防効果があると言われています。

大腸がんの症状

他のがんと同様に初期の段階では自覚症状はほとんどありません。
がんが進行すると便に血が混じったり、便の表面に血液が付着したりします。
出血が続くと貧血になったり、がんによって腸が狭くなると便が細くなったり便秘と下痢を繰り返したりします。
腸が塞がってしまうと腸閉塞になり腹満や腹痛、嘔吐などの症状が出ます。
痔の出血だと思い放置しているとがんが進行してしまうことになります。

大腸がんの診断

初期のがんは自覚症状がないため、人間ドックなどの便潜血検査で陽性となり大腸内視鏡検査で発見されることが多いです。
大腸内視鏡検査は細いスコープを肛門から挿入し、直腸から盲腸まで大腸の内面を観察する検査です。
異常があれば必要に応じて組織検査を行います。便が残っていると中がよく見えないため、あらかじめ下剤や腸管洗浄液を飲む必要があります。
女性の方は羞恥心もあって敬遠されがちですが、便潜血検査で要精密検査となったら内視鏡検査を受けて下さい。

高齢の方など内視鏡検査にリスクのある方はCTコロノグラフィ(CTC)検査があります。
下剤で大腸を空にした後炭酸ガスで腸を膨らまし、大腸のみを立体的にCTで撮影する検査で、内視鏡検査より苦痛が少ないメリットがあります。

大腸がんの治療

大腸がんの治療は大きく分けて、内視鏡治療、手術、薬物療法があります。大腸がんの進行度(ステージ)に合わせた治療を選択します。

ステージ0で粘膜内にとどまっている場合、内視鏡での治療が可能です。
内視鏡的ポリープ切除術、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があり、病変の形や大きさ、癌の広がりを考慮して治療法が決まります。開腹手術に比べ体への負担が少なく、外来での治療も可能です。

内視鏡的治療ができない場合は手術治療となります。
がんの部位だけでなくがんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節を合わせて切除します。
腸管を切除した後残った腸管をつなぎ合わせますが、直腸入口にあるがんで腸管をつなぎ合わすことができない場合は人工肛門を作ります。
最近では腹腔鏡下支援手術やロボット支援下手術も行われており、従来の開腹手術に比べ傷跡も小さく術後の回復も早い利点があります。

薬物療法には術後の再発を防ぐ補助化学療法と、手術でがんが取り切れない場合に行う切除不能進行・再発大腸がんに対する薬物療法があります。
薬物療法に使用する薬には細胞障害性抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。
最近は薬物療法を始める前にがん組織の遺伝子を調べ、その結果に合わせて効果のある薬物を選択することによって従来より高い延命効果が得られています。

腸内細菌(腸内フローラ)のお話

腸内細菌(腸内フローラ)とは?

私たちの腸の中にはたくさんの細菌が住み着いています。
その数は100兆以上と言われています。こうしたたくさんの細菌が腸内に住み着いている状態を、色々な花が咲き乱れているお花畑(フローラ)と似ているという意味で「腸内フローラ」と呼びます。

腸内フローラの細菌が便通やお腹の調子を整えることは以前からよく知られていました。
善玉菌や悪玉菌といった言葉も馴染みがあるかもしれません。
しかし最近、腸内フローラはそれだけではなく、全身の健康や美容など日々の暮らしに大きく関わっていることがわかってきました。

腸内フローラには善玉菌・悪玉菌意外に日和見菌という菌も存在します。
日和見菌は悪玉菌が増えると体に悪い働きをし、善玉菌が増えると良い働きをします。
腸内細菌は我々が食べた物を餌として互いに競い合ったり助け合ったりして生きています。
色んな種類の菌がいる状態を多様性(ダイバーシティ)と呼び、これらがバランス良く腸内に住み着いている状態が良い腸内環境です。

それでは腸内フローラはどういった働きをしているのでしょうか?

1.腸内フローラの乱れが肥満の原因になる!

2013年世界的に有名な科学雑誌「サイエンス」に「腸内細菌の乱れが肥満の原因になる」という研究が発表されました。
この研究によると腸内フローラのバクテロイデスというグループの菌が少ないと肥満になりやすいことがわかりました。

バクテロイデスなどの菌は我々が食べた物を分解して短鎖脂肪酸という物質を作ります。
短鎖脂肪酸は腸から吸収され全身の脂肪細胞に運ばれます。脂肪細胞は短鎖脂肪酸を感知すると栄養分の取り込みをやめ過剰な脂肪が貯まるのを防ぎます。
また交感神経に働きかけて全身の代謝を活性化させ余った栄養分を消費させる方向に働きます。

たくさん食べても太らない人、逆に少し食べても太ってしまう人、その原因は腸内フローラの違いにあるのかもしれません。

また短鎖脂肪酸は膵臓に働いてインスリンの分泌を促すため、糖尿病にも効果があると言われています。

2.腸内細菌が作る「エクオール」でお肌が若返る!?

エクオールは女性ホルモンに似た構造の物質で、肌の老化を遅らせたり更年期症状のホットフラッシュや骨密度の低下を防ぐなどの働きがあります。
更年期になり女性ホルモンの分泌量が減るとエクオールはそれを補ってくれるのです。

エクオールは大豆の中に含まれるイソフラボンを腸内細菌が変化させることで生まれます。
しかしこの菌は誰でも持っている訳ではなく、日本人はおよそ2人に1人です。エクオールを作れるかどうかは尿検査をするとわかります。
エクオールを作れない人もエクオールを含むサプリ「エクエル」を服用することでおぎなうことができます。(ご希望の方は当院でもエクエルを販売しています)

エクオールを作れる方も大豆を意識的に摂ることによってエクオールを作る菌も増え、より効果が出ます。

3.アレルギーと腸内細菌

花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息といったアレルギー疾患は、元々体に備わっている免疫反応が過剰に働くことによって起こります。
最近アレルギー疾患の予防・治療に腸内細菌が重要な役割をすることがわかってきました。

腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の一種の酪酸が、過剰な免疫反応を抑える「制御性T細胞」を増やすことがわかってきました。
またアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の方の腸内フローラを調べると、腸内細菌のバランスが崩れた状態(ディスバイオーシス)である事がわかってきました。
このため体内にアレルゲンが侵入しやすくなりアレルギー反応を起こしやすい事も原因のひとつと考えられます。

4.腸のバリア機能

善玉菌の一種のビフィズス菌が出す酢酸は、腸の細胞を活性化し有害物質が体内に入らないようにするバリア機能を高める作用があります。
腸内フローラのバランスが乱れると、腸のバリア機能が低下して腸の中の有害物質が血液中に侵入してくるようになります。
こうした腸のことを体内に毒素が漏れる状態という意味で「リーキー・ガット」と呼びます。

リーキー・ガットになって血液中に菌の毒素が漏れ出すと、全身に弱い炎症が起き、前項のアレルギーの原因になったり糖尿病や動脈硬化、がんなどの重大な病気を引き起こす要因となります。

腸壁の細胞は腸内細菌が作り出す酢酸などの短鎖脂肪酸をエネルギー源にしています。
腸内フローラのバランスが崩れ(ディスバイオーシス)て短鎖脂肪酸の生産量が減ると腸の細胞の活力が低下しバリア機能が低下してしまいます。

腸のバリア機能を回復するには、短鎖脂肪酸を作るバクテロイデスの餌となる食物繊維を多く摂る事が大事です。

腸のバリア機能が崩れて起こる潰瘍性大腸炎では健康な人の便を移植する(つまり正常の腸内フローラを移植する)と症状が改善することが知られています。(現在は保険適応外の治療)

5.腸内細菌と脳

腸には脳に次いで神経細胞が集まっている臓器で、迷走神経を介して脳と密接につながっています。
第2の脳と呼ばれる腸ですが、腸内細菌には神経細胞を刺激する能力があることがわかってきました。
腸内細菌がセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質を作り、これが刺激となって神経細胞に伝わっていき気分や感情に影響を与える可能性があります。
動物実験の段階ですが、腸内細菌が人の性格やうつ病、自閉症に関係しているのではないかとの研究もあり注目されています。

まだまだわからないことが多い腸内細菌ですが、非常に注目されている分野で今後色々なことが解明されていくと思います。
「腸活」という言葉も聞かれ、一般の方も興味があることと思います。まず自分の腸内フローラがどんな状態なのか検査によって知ることができます。
当院では腸内フローラ検査(自費)を行っています。ご希望の方はお申し出ください。

ピロリ菌のお話

ピロリ菌とは?

胃の中には、食べ物を消化するための強い酸(胃酸)が分泌されていて、細菌はとても住めない環境だと長い間考えられていました。
ところが1983年にオーストラリアのウォーレンとマーシャルという2人の医学者が、胃の粘膜に住み着いている細菌を取り出して、培養することに成功しました。
この細菌(バクテリア)はらせん形(ヘリカル)をして、胃の出口付近(幽門:ピロルス)で発見されたので、ヘリコバクター・ピロリと名付けられました。これが一般的には、ピロリ菌と呼ばれています。

ウォーレンとマーシャルはこのピロリ菌が胃炎や胃潰瘍の原因ではないかと考えました。しかし最初はなかなか信用されませんでした。
というのは、今までストレスなどでできると考えられていた胃潰瘍が、ピロリ菌が原因となると、肺炎や膀胱炎と同じような細菌による感染症ということになり、抗生物質による治療が必要になるからです。
そこでウォーレンは、自ら培養したピロリ菌を飲み込み、見事(?)急性胃炎になったのです。それからというもの全世界で急速にピロリ菌の研究が進み、今では胃炎や胃潰瘍はもちろん、胃癌やマルトリンパ腫などの成因にもピロリ菌が深くかかわっていることがわかってきました。
欧米ではかなり以前から、胃・十二指腸潰瘍の治療には抗生物質を組み合わせた除菌療法が常識となっています。
日本でもようやく2000年11月より除菌療法が保険適応になりました。

ピロリ菌はどこからうつるの?

くわしい感染経路はわかっていませんが、おそらく口を経由して感染する(経口感染)ものと思われています。

感染するのは通常こどものころで、おとなになってからは感染することはほとんどないようです。
発展途上国など衛生状態が良くない環境で感染率が高く、先進国では感染率が低いと言われています。
日本では戦中戦後まもないころの衛生状態が悪いころに生まれた人の感染率が高く、40才以降の人は7~8割がピロリ菌陽性と言われています。
また近年内視鏡を介したピロリ菌の感染が問題になっています。これは十分に消毒されていない内視鏡(胃カメラ)で検査を受けたためにピロリ菌に感染してしまう危険があるのです。当院ではこのようなことを防ぐために、専用の内視鏡洗浄機を導入しました。
検査毎にこの洗浄機にかけて内視鏡を洗浄するので、安心して検査を受けていただくことができます。

ピロリ菌に感染しているかはどうやって調べるの?

大きくわけて、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

内視鏡検査の場合は、直接胃の粘膜の一部を採取(生検)し、ピロリ菌の存在を調べます。
これには採取した胃の組織を顕微鏡で観察してピロリ菌の有無を調べる鏡検法と、採取した組織を培養してピロリ菌が出現するか観察する培養法と、ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素の有無を調べる迅速ウレアーゼ試験があります。
内視鏡を使わない方法として、尿素呼気試験と血液をとってピロリ菌に対する抗体を調べる血液検査があります。
尿素呼気試験とは特殊な炭素を含んだ尿素という薬を飲んで、飲む前と後で吐く息(呼気)をバッグに採取します。
ピロリ菌がいると、ピロリ菌の出すウレアーゼという酵素の働きで、尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解されて吐く息の中に出てきます。ですから薬を飲んだ後の呼気の中に特殊な炭素が含まれていれば、ピロリ菌によって尿素が分解されたということになります。
血液検査は簡単ですが、ピロリ菌に対する抗体は、ピロリ菌が死んでもしばらくは消えないので、治療がうまくいったかどうか(除菌)の判定には向いていません。

保険診療でピロリ菌の有無を調べる場合や除菌を行う場合、内視鏡検査で慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍が認められた場合に限ります。
内視鏡検査は少し大変ですが、直接胃の粘膜の状態が観察できますし、癌の合併がないかどうかもわかります。経鼻内視鏡は負担も少ないので、まず内視鏡検査で、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の有無とピロリ菌の有無を調べて、除菌後の効果判定は尿素呼気試験を行うのが良いと思われます。

ピロリ菌の治療はどうやって行うの?

ピロリ菌の治療は2種類の抗菌薬と酸分泌抑制薬の組み合わせで行います。

具体的にはプロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる強力な胃酸分泌抑制薬を朝夕の2回と、アモキシシリンとクラリスロマイシンという抗菌薬をそれぞれ1,500mg、400~800mgを朝夕の2回に分けて1週間内服します。PPIだけで潰瘍は治りますが、ピロリ菌は死にません。また抗菌薬だけでも酸性の胃の中では効き目がよくありません。
いろいろな薬の組み合わせが試されましたが、現在この方法が最も効果があり、約80~90%の除菌(ピロリ菌が死に絶えた状態)が得られるといわれています。
副作用で下痢をおこす方がいます(抗菌薬のせいで腸内の良い細菌も死ぬため)が、重篤な副作用はありません。
除菌に成功すると、再びピロリ菌に感染することはまずありません。また除菌後に胃酸の分泌が良くなって、逆流性食道炎をおこす場合がありますが、多くは軽く済むようです。
最初の除菌に失敗した場合は、抗菌薬の効かない耐性菌ができています。クラリスロマイシンをメトロニダゾールという薬に変更してもう1回除菌療法行なうことができます。

C型肝炎のお話

C型肝炎とはどんな病気?

特に自覚症状はないんだけれど、健康診断で肝臓が悪いといわれ、調べたらC型肝炎だった。あるいは、献血をしたら、C型肝炎といわれた。
このような経験をされた方はいませんか?C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝臓に住み着いており、多くの場合徐々に進行して、慢性肝炎から肝硬変、さらには肝臓癌をおこしてくる慢性の病気です。

このようなC型肝炎の人は日本で100万人以上いるとされています。
近年肝臓癌で亡くなる方は、年間3万人を超えて年々増加し、肺癌、胃癌に続いて癌による死亡原因の第3位となっています。この肝臓癌で亡くなる方の8割が、C型肝炎です。

C型肝炎はどうやってうつるの?

C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。

まだC型肝炎のくわしいことがわからなかった10年以上前では、輸血や十分消毒されていない注射器の使い回しなどから感染したと考えられます。
現在(1994年以降)では輸血用血液に対してC型肝炎ウイルスのチェックがされており、ほとんどの医療機関で使い捨ての注射器が使用されていますので、新しくC型肝炎に感染することはまずありませんが、以前輸血を受けたことがある方は、1度C型肝炎のチェックを受けた方が良いでしょう(特に輸血後に黄疸が出た方)。
C型肝炎の方と一緒に暮らしても、日常生活でうつることはありません。感染力が弱いので、性交渉でうつることもほとんどないとされています。(B型肝炎は性交渉で感染します。)

C型肝炎にうつるとどうなるの?

C型肝炎ウイルスに感染すると、通常数週間の潜伏期を経て急性肝炎をおこします。

症状は微熱、食欲不振、全身倦怠感などかぜに似た症状です。
A型急性肝炎やB型急性肝炎に比べて、C型急性肝炎は症状が弱いので、気づかずにすぎてしまう場合もあります。しかしA型や成人のB型急性肝炎は症状がおさまれば治ってしまいますが、C型急性肝炎はその約60~80%が慢性化します。
慢性肝炎の時期は自覚症状がないために、たまたま血液検査で肝臓の障害を指摘されて気がつく場合がほとんどです。
こうして気づかれないまま、慢性肝炎が徐々に進行すると、その約30~40%の人は約20年で肝硬変になると言われています。
肝硬変がさらに進行すると、黄疸、腹水、食道静脈瘤、肝性脳症といった様々な合併症がでてきます。
なかでも肝臓癌の合併率が高く、肝硬変になった人の60~80%はC型肝炎にかかってから20~30年で肝臓癌を発症します。

C型肝炎かはどうやって調べるの?

C型肝炎かどうかは血液検査でC型肝炎ウイルスに対する抗体であるHCV抗体を測定することでわかります。

HCV抗体が陽性であれば、現在あるいは過去にC型肝炎に感染したことがわかります。さらにC型肝炎ウイルスが現在も感染しているかどうかは、C型肝炎ウイルスの遺伝子であるHCV-RNAを測定します。
これが陽性であれば現在もC型肝炎ウイルスに感染していることがわかります。
AST,ALT(あるいはGOT,GPT)という言葉をお聞きになったことはありませんか?
これらは肝臓の細胞の中に含まれている酵素で、肝炎で肝臓の細胞が壊れると血液中に漏れ出して基準値よりも高くなります。ですからAST,ALTが高値の場合肝臓に障害があることがわかります。
慢性肝炎の場合この異常が6ヶ月以上続く場合を言います。

C型肝炎はどうやって治療するの?

C型肝炎の治療で大切なことは、慢性肝炎のうちに治療して肝硬変や肝癌に進行するのを防ぐことです。C型慢性肝炎の治療には、ウイルスそのものを退治する原因療法と、ウイルスは退治できないが肝炎の鎮静化をはかり、肝硬変への進行を遅らせる対症療法があります。

C型肝炎の治療は最近目覚ましい進歩があります。従来はインタ-フェロンという注射薬で治療するのが主流でした。当初はインターフェロンを使用しても3割程度の方しか治療できない時期もありました。
その後インターフェロンの改良や飲み薬との併用で8割近くの方が治るようになってきました。しかしインタ-フェロンは定期的に注射に通う必要があり、また副作用も強く途中で治療を断念せざるを得ない方もみえました。
2014年からインタ-フェロンを使用せず、抗ウイルス剤という飲み薬だけで治療する方法が保険適用になりました。この方法は治癒率が高いだけでなく副作用も少ないので、以前インタ-フェロンでうまく治療できなかった方や高齢の方でも治療できる画期的な治療法です。さらに今後も新しい経口ウイルス剤が保険適応になる予定です。
C型肝炎は飲み薬で治療できる時代になりました。また現在C型肝炎の治療に関して国から治療費の補助がでます。
抗ウイルス剤は高価ですが、申請すれば月々1万円あるいは2万円(治療を受ける方の年収による)の自己負担で治療を受けることができます。
今までインタ-フェロンの副作用が怖くて治療をためらっていた方も一度ご相談ください。

脂肪肝のお話

脂肪肝は怖い病気?

「脂肪肝ってお酒飲みの病気でしょ!?」と思っている方も多いかもしれませんが、最近お酒を飲まない方の脂肪肝が増えています。

脂肪肝とは中性脂肪が肝臓内に多く蓄積した状態です。症状がないため放置しがちですが、進行すると慢性肝炎から、肝硬変、肝癌になるリスクのある病気です。

脂肪肝には飲酒量が多い人に起こるアルコール性脂肪肝と、アルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪肝(non-alcholic fatty liver disease : NAFLD)があります。
NAFLDはいわゆるメタボとの関連が指摘されています。
この為最近ではMAFLD(metabolic associated fatty liver disease)とも呼ばれます。
このNAFLD(MAFLD)の内10〜20%の人が慢性肝炎から肝硬変に進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH又はMASH)となります。

現在日本のNAFLD患者数は約2,000万人に上ると推定されています。
従来肝硬変の原因の多くはB型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝炎でしたが、現在はこれらの病気は薬で治るようになったため、NASHによる肝硬変が増えてきて問題となっています。

なぜ肝硬変が問題になるのでしょうか?

肝硬変とは慢性的に肝炎が続いた結果、肝臓に繊維化が起こり肝臓が硬く縮んでしまった状態です。肝硬変が進行すると腹水や黄疸、食道静脈瘤や肝癌の合併を起こしてきます。いったん肝硬変になった肝臓は元に戻りません。ですから脂肪肝のうちに治療する必要があります。

脂肪肝は自覚症状がないので、たまたま健診などで肝機能異常を指摘されて判明することが多いのです。この為日本肝臓学会では2023年奈良で行われた肝臓学会総会で、肝機能の数値である「ALTが30を超える場合はかかりつけ医を受診しましょう」という奈良宣言を出しました。これは早めに脂肪肝を見つけることによって将来の肝硬変・肝癌を予防することを目指しています。
症状がないからと言って放置せず、健診で異常が認められたらかかりつけ医を受診して下さい。

肝機能異常がある場合、まず腹部超音波検査で肝臓の状態を見ます。
脂肪肝の方は通常よりも肝臓が白っぽく写ってきます。
血液検査ではウイルス肝炎や他の要因がないかチェックします。肝臓の繊維化(肝硬変や肝癌のリスクがあるか)の予測にはFIB-4インデックスがよく用いられます。血液検査値など4つの項目から計算する数値で、FIB-4インデックスが1.3以上の場合は専門医受診が薦められます。NASHかどうかは肝生検といって肝臓に細い針を刺して組織を回収し診断します。

脂肪肝には特効薬はありません。
アルコール性脂肪肝の方は飲酒量を減らすことが一番の薬です。
非アルコール性の方で高血圧や糖尿病、脂質異常症のある方はまずその治療を続けることと、肥満やメタボの方は食事内容の改善や適度な運動を行なって減量することが大切です。

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加藤内科胃腸科クリニック

内科・胃腸科・小児科

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